ギター弾きの恋:SWEET AND LOWDOWN
1930年代のアメリカ・シカゴ。
天才ジャズ・ギタリストのエメット(ショーン・ペン)は破滅的な性格で、派手好きでうぬぼれ屋で大酒飲みで女遊びが大好きで、ステージをキャンセルすることもしばしばという男だったが、本人に言わせると世界で2番目に上手いギター弾きで、実際にその演奏を聴いた人間をとりこにするような力を持っていた。
この作品は、現代に生きる様々な人物のインタビューを通してエメットの半生を浮かび上がらせるという、ドキュメンタリー・タッチの構成で描かれた映画です。
但しエメットは実在の人物ではありませんし、完全にフィクションです。
エメットの破天荒な日常の中で、彼がある日出会うのは口のきけない娘ハッティ(サマンサ・モートン)。
自惚れが強くて身勝手で子供っぽい振る舞いをするエメットだが、口がきけず頭もあまり良くないけど純情で心優しいハッティは、そんなエメットを素直に愛してしまいます。
でもハッティに憧れの視線を向けられるのは好きだけど、どうしてもハッティに対して邪険な態度をとってしまうエメット。
結婚なんてする気はないと公言しているエメットですが、上流階級の変わり者の女性ブランチ(ユマ・サーマン)と出会うと電撃的に結婚してしまいます。
でも結局二人の結婚生活は上手くいかない。何もかもが思うとおりにならず、一人ぼっちで孤独に耐えるエメット。
どんな時にもエメットを崇拝してくれたハッティはもう側にいない。
エメットとハッティを見ているとフェデリコ・フェリーニの名作「道」を連想します。
ラスト・シーンでエメットがギターを枯れ木に叩きつけて壊して、そのあと後悔の涙を流しているシーンが、ジェルソミーナが死んだあとにザンパノが泣いているシーンと管理人にはかぶさりました。
ウディ・アレン監督は特にフェリーニへのオマージュとは言ってないようですが、テーマが微妙に似ている感じがします。
ショーン・ペンはこういう癖のある人物を演じると上手ですね。
ユマ・サーマンもゴージャスで勝気で気ままな金持ちの女性といった雰囲気が良く出ていて良かった。
そしてハッティを演じたサマンサ・モートンの押さえ気味の笑顔が可憐で心に残ります。
全編に流れる懐かしいジャズの音色が心地良く、哀しい愛を描いた余韻の残る傑作だと思います。
製 作 | 1999年 アメリカ |
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監 督 | ウディ・アレン |
出演者 | ショーン・ペン サマンサ・モートン ユマ・サーマン |
音 楽 | ディック・ハイマン |