幸福の黄色いハンカチ

幸福の黄色いハンカチ

失恋して北海道に傷心旅行に来た若い男が、同じような事情の女と出会い、更に網走刑務所を出所したばかりの元炭鉱夫の中年男性と知り合って、彼の別れた妻が住む夕張の町に向かうという山田洋次監督のヒューマン・ドラマです。


失恋でヤケになった青年・花田欽也(武田鉄矢)は、勤務先の工場を辞めた退職金でクルマを購入し北海道に向かった。

網走までやってきた欽也は、若い女の子を見かけると声をかけてナンパを始めるが、そんな彼に釣られてしまったのは、欽也と同様に失恋して一人で傷心旅行に来ていた女性・小川朱美(桃井かおり)だった。

下心ミエミエの欽也のクルマに乗った朱美は、欽也と二人で海岸までドライブし、そこにいた中年男性・島勇作(高倉健)に写真を撮ってもらった。

朱美は勇作に一緒にクルマに乗ろうと誘い、三人は共に旅することになる。

勇作は元炭鉱夫で、殺人罪で網走刑務所に服役していた男だった。

やがて欽也・朱美と親しくなった勇作は、別れた妻・光枝(倍賞千恵子)に「自分を待っていてくれるなら、家の前に黄色いハンカチを掲げておいてくれ」と手紙を書いたことを打ち明ける。



「母に捧げるバラード」が大ヒットしたフォーク・グループ海援隊のメンバーの武田鉄矢が俳優としてデビューし、さえない青年・花田欽也役を好演して、後の金八先生につながっていった記念すべき作品です。

ともかく持てない男で、女なら誰でもいいという感じでナンパしまくって、傷心旅行中の冴えない女の子に欲望むき出しにして、それを刑務所を出所したばかりの勇作に「そう言うのを草野球のキャッチャーって言うんだ」「ミットもない」と叱られます。

一方で勇作も、惚れ抜いていながらも離婚した妻に書いた手紙、果たして今でも待っていてくれるのかどうか・・・男の中の男のような勇作でも、イザとなると会いに行く一歩が出せません。

そんな勇作の背中を押すのは、ミットもない青年・欽也と冴えない朱美で、勇作の半生を聞き知った二人もまた自分たちの失恋を乗り越えて行きます。

北海道の美しい自然を背景に描かれたヒューマン・ロードムービーで、俳優陣の演技も素晴らしく、高倉健の朴訥さが本当に生かされていると思います。そして炭鉱の町に生きる芯の強い女・光枝を演じた倍賞千恵子も良かった。

映画館でも観たし、TVでも何度か観ましたが、本当に良い映画だと思います。


製 作 1977年 日本
監 督 山田洋次
出演者 高倉健
倍賞千恵子
武田鉄矢
桃井かおり
音 楽 佐藤勝

 

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