お嬢さん乾杯
恵まれない家庭に生まれながらも苦労して自動車工場の経営を軌道にのせ、それなりの資産を得た青年石津圭三(佐野周二)と、没落した元華族の令嬢池田恭子(原節子)。生まれも育ちも違う二人が知人の紹介で出会い、愛を育んでいく姿を描いた名匠木下恵介監督の名作ラブコメディです。
昭和24年の作品で流石に映像は少し古いですけど、バックに流れるクラシック音楽が効果的で、不器用な二人が何とも微笑ましくて、思わず観ながら頬が緩んでしまう映画です。
無教養で成金趣味の青年圭三が、教養があって清楚なお嬢さま恭子を前にして、オレなんかとは住む世界が違うと思いつつ惹かれていくのが面白い。
美しく心優しいご令嬢に惹かれながらも、何故こんな無骨なオレに?と圭三は疑問を抱きますが、お嬢様のお宅を訪問した時にその疑問が解けていきます。
池田家は元華族の家柄ですけど、戦後の混乱期にあって没落して貧に窮した状況にあります。一族全員が没落した自分たちの境遇を嘆き、今勢いのある圭三に対しては、新興成金のくせにと言う気分がどこかにあります。
世が世ならと昔を回顧する池田家の面々に囲まれて複雑な気持ちを抱く圭三が気の毒になりますが、そこは真剣なだけではないラブコメだけあって、恭子さんは自分の境遇を嘆くではなく前向きで明るいのですね。
佐野周二(関口宏のお父さんですね)が無骨だけど気持ちの優しい成金青年を見事に演じ、原節子の佇まいは品が良くお嬢さんという感じがよく現れています。
佐野周二の弟分役の佐田啓二(中井貴一のお父さん)も小粋な感じで良かった。
こんな素敵な作品が、私が生まれる前の日本映画にも有ったんだと感心しました。
そして昭和20年代の景色に郷愁を抱きながら映画を観る幸せ・・・。いいですねぇ。
製 作 | 1949年 日本 |
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監 督 | 木下恵介 |
出演者 | 原節子 佐野周二 佐田啓二 |
音 楽 | 木下忠司 |