どん底:LES BAS-FONDS
文豪ゴーリキーが社会の底辺で暮らす人々を描いた戯曲を、舞台を帝政ロシアからフランスに移して描いたジャン・ルノワール監督の名作映画です。
黒澤明監督も同じように江戸時代に舞台を移した作品を発表していますが、管理人はそちらは観ていません。
場末の木賃宿に住む泥棒稼業のペペル(ジャン・ギャバン)は、宿の主人コスツィリョフの女房ワシリーサ(シュジ・プリム)と愛人関係にあったが、本当はワシリーサの妹で気持ちの優しいナターシャ(ジュニー・アストル)の事を愛していた。
ある夜ペペルは貴族の屋敷に忍び込むが、その屋敷の主人の男爵(ルイ・ジューヴェ)は賭け事にのめり込んで全財産をなくし、ピストル自殺をするところだった。
屋敷で出会った泥棒と男爵、二人は何故か馬が合い、男爵は自殺を思いとどまり全てを捨ててペペルの住む木賃宿に移り住む。
人生に絶望しながらも生きていかざるを得ない貧しい人々、そんな中で生まれ変わって新しい人生を切り開きたいと願っている泥棒ペペル、泥棒は嫌だけど実はペペルを愛している優しい娘ナターシャ、そして上流社会から社会の底辺に移り住んだ男爵。
原作は暗くて救いようのない作品というイメージを持っていましたが、この映画は悲惨な状況の中にあっても、どこか人間賛歌っぽい雰囲気が感じられて管理人は好きな映画です。
最初にこの作品を観たのは、NHKの名作映画劇場だったと思います。
「北ホテル」とかあまり民放では放映しないようなNHKらしい映画をノーカットで放映していました。
あまり期待しないで観たのですけど、予想以上に面白くて驚きました。
直情径行なペペルを演じた若いジャン・ギャバンも良いですけど、何と言ってもこの作品で強烈な印象を与えるのは乞食貴族となる男爵を演じているルイ・ジューヴェの格好の良さです。
潔い生き方が実に粋な男爵ですが、ルイ・ジューヴェはこの個性的な役を見事に演じています。
製 作 | 1936年 フランス |
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監 督 | ジャン・ルノワール |
出演者 | ジャン・ギャバン ルイ・ジューヴ ジュニー・アストル |
音 楽 | ジャン・ウィエネル |